山湯里の旅・出湯紀行
男内湯
露天風呂
廊下

文豪・島崎藤村も投宿した湯宿に
田沢温泉・ますや旅館
島崎藤村の「千曲川スケッチ」に登場する宿として、若き日の藤村がこの宿に3日間逗留してその
詩情を練った。温泉街に入る前に遠くからでもすぐわかる高楼とやぐら造りの木造3階建の宿は今
では貴重な建物でもある。藤村の千曲川スケッチに出てくる一節に「……升屋というのは眺望のよ
い温泉宿だ……楼上から遠く浅間一帯の山々を望んだ…」とあるが、この詩を作った時の藤村が居
た部屋は飾り物ではなく今でも誰もが宿泊できる。
枡形の看板が掲げてある玄関を入ると、時代が明治から止まっているかのようなロビーがある。浴
室へは長い廊下が続くが、途中障子紙で仕切られた客室があり古き良き時代を彷彿させる。浴室は
内湯とガラス1枚隔てて露天風呂があり、露天風呂は竹簀で囲い、和風の趣きを出しているが、内
湯の浴室と湯船は現代風で、これが桧の風呂だったらと思うのは私の我侭かも知れない。
少し温めの湯は長湯しても逆上せることがなく、そのうち詩が浮かんで来ないものかと粘ったが、
結局一節も浮かばず湯から上がった。

EpisodeQuiz
建物自体も貴重だが、施設内には数多くの珍品、骨董品などがあり、中でも明治30年に刊行した
という銅版画で作製した日本博覧図の敷地図で当時の宿の様子が解る。また■■省御指定旅館の看
板も珍しい。今ならJR協定旅館とでも言うのだろうか?

■入浴料:500円
■泉質:単純硫黄泉
■住所:小県郡青木村田沢
■tel.0268-49-2001
■date:2002.5.9

地域&地図情報
全景 藤村の部屋


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